1975年製の精神病院の映画「カッコーの巣の上で」
精神病棟が舞台の1975年製の映画。
患者か医療従事者、管理する側とされる側、ヒッピーと体制派のような当時らしい図の割に華やかさや自由はありません。
閉塞的な精神病棟にて、現実や自己嫌悪から目を背け、諦めきった彼らの口元が少し緩む程度の日常。
円満な死への道半ば過ぎといった雰囲気。
タイトルについて
邦題は「カッコーの巣の上で」、原題は "One flew over the cuckoo's nest." です。
これまた意味不明なのでググってみると下記の解説が見つかりました。 detail.chiebukuro.yahoo.co.jp
ネタバレ
主人公の”マクマーフィ”と、耳の聞こえないネイディブアメリカン”チーフ”。
この二人は病人の振りをして入院しています。
カッコーの托卵という生態と、本来いるべきではない場所に逃げ込んだ上記の二人をカッコーになぞらえているようです。
彼らは精神病院からの脱走を企てます。
その結果を "One flew over" と表しているようです。
内容から思ったこと
内容は、精神病の疑いがあるため刑務所に送られず、精神病院へ強制入院させられる主人公。
それをいいことに、主人公はあまり悪意も意味がない、怒るより先に呆れてしまうような悪事を繰り返します。 ※1
※1. 同じ精神病院の入院患者を全員脱走させてチャーターボートを無断借用し釣りに行く、院内の風呂場で賭場を開く、警備員を買収した上で女を充てがい酒を持ち込んでどんちゃん騒ぎ…など。
上記のいたずらはロクでもないですが、多様性や柔軟性どころか根拠すら持たない、患者の人権を軽視する治療方針への反抗ともとれます。※2
※2. コミュニケーションこそ精神病の治療に有効という考えこそ絶対的に正しいものとし、患者の「一人になりたい」という欲求を否定する。 患者に処方している薬の名前・薬効を開示しない。 触れてほしくない自身の問題点について強制的に公衆の面前で話させる…など。とても治療とは思えない治療を口実にした暴力という方が適切な有様。これらがまかり通った時代もあるのだから恐ろしい。近年であれば老人介護施設での老人への暴力などが近い事例ではないでしょうか。
序盤は割と朗らかな映画なのですが、終盤は悲惨です。
ここにはいない誰かが用意した選択肢の中に、”臭いものに蓋をする”というものが存在し、その選択によって生じた結果がどのようなモノだとしても、そこには欠片の罪悪感もない、分業化・責任の分散・思考放棄によって成り立っている現代社会にもありがちな ”しかたない” という言葉と虚しさを想起させる最後となっています。
残念ながら、この映画は1975年製にも関わらず話の内容はちっとも古臭くありません。
- 正気か否か?
- もし正気でないならばどう対処すべきか?
・・・など、最近になってようやく、まともな議論ができる様になった題材だからだと思います。
子育てや子供の叱り方なども同じような感じではないでしょうか?
ここ1世代程度の歴史しかない現時点での常識は、作中の病院の規則や治療方針と同じような問題点が多々あると私は感じています。
おすすめ?
正直、頭の病気などに関心のある暇人か誰か以外には全くお勧めできる映画ではありません。
しかし、その様な方は一度ご覧になってはいかがでしょうか。
さよなら、さよなら、さよなら。